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No.8 小さな子牛の大きな不安

2023/01/04(水)


 肥育牧場で働いているのですが、少し心配なことがあります。

それは、生産者団体の初生集荷で入荷してくる乳用種の雄子牛が非常に小さいということです。交雑種(F1)よりも小さくて和牛並みの個体が目立ちます。市場価格が暴落しているだけでなく、売買が成立しないことも多いそうですから、肥育牧場と契約している酪農家にとっては貴重な出荷先に違いありません。それにしても、子牛が小さい…

7月に白糠町でおよそ3万頭を肥育する農場が経営危機に陥ったことで、乳用種の雄子牛価格が暴落し回復することなく越年しました。11月に乳価の値上げはあったものの、飼料や肥料、電気料金、燃料価格、各種生産資材の価格が軒並み30%~100%上昇し、殆どが高止まりしたままなので酪農家は苦境の真っ只中で新年を迎えました。

根室管内最大の生産者団体では、年末の時点で所属組合員の7割が組合員勘定の赤字を計上し、その多くが政策金融公庫から営農資金を借り入れたと報道されました。150戸が総額約15億円を借り入れたということなので、単純に1戸あたり1,000万円を借金したことになります。経験したことのない厳しい経営環境の悪化に追い打ちをかける乳用種の雄子牛の価格暴落。酪農家にとって苦しい時の副収入源まで絶たれ、まさに八方塞がりの状態です。

一般論ですが、「小さな子牛」は寒冷や疾病に対する抵抗力が弱く、哺育育成に携わる者にとってはリスクが高く敬遠したいのが本音です。ではなぜ子牛が小さいのか。哺育に携わっていた時の資料によれば、哺育センター間の比較で本町の子牛は出生時の体重が十勝管内の子牛に比べて3㎏~4㎏少なく、このことが生存率にも影響していると考え哺育技術の研鑽を積みました。そして最終的には、哺育技術を生かすも殺すも「乾乳期の管理」次第との結論に達したのでした。リアルタイムでは生産性が低いということで、妊娠後期の乾乳牛には粗末な餌しか与えないという酪農家も珍しくありません。

でも「小さく産んで大きく育てる」時間の余裕があるのは、「人間」だけで、牛のように二年で出産あるいは出荷という時間制約があるものには当てはまりません。牛は「大きく生んで大きく育てる」でなければなりません。そのためには乾乳期、特に後期の栄養管理が重要なのですが、組合員勘定の帳尻を合わせるために濃厚飼料を削るだけでなく、大事な粗飼料まで売却されているとしたら… そしてそのつけが「小さな子牛」だとしたら、それは由々しき事態です。

「小さな子牛の大きな不安」が拡大しないよう、粗飼料の確保に向け酪農家への支援策を講じなければなりません。年度末までに粗飼料を売却する酪農家が増えることが懸念されるからです。新しいサイレージが給与できるようになるのは最短で8月。それまでに乳牛が壊れて基幹産業の土台を揺るがす事態を招かぬよう、粗飼料の流出を防がなければなりません。まずは実態の把握が必要です。