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No.12 広報難民の問題

2023/02/19(日)

 

「広報しべちゃ」は、標茶町が毎月発行している広報誌です。広報誌の配布は各町内会に委託されおり、対価として町から行政事務委託料が支払われます。行政事務委託料は、町内会加入の有無に関わらず地域内の全戸分が支払われていて、多くの町内会では班長が会員と会員以外の世帯への広報誌配布を担っています。町は、このように大切な情報や情勢を伝えるための仕組みを町民と共に長い年月をかけて築いてきました。

 「ひとりの不幸も見逃さない」ことは、町政を執行する上で絶対に譲れない一線です。すべての町民への情報提供手段である「広報しべちゃ」も、当然その重要な役割を果たしています。しかしいま、その方向性が大きく変わろうとしています。既に変わったという方が正しいかも知れません。

標茶町は、近隣の自治体に比べて町内会加入率が高いのですが、100%ではありません。さらに近年は町内会に加入しない町民が増加する傾向にあり、町内会員の負担が増す中での「非加入世帯」への広報誌配布には疑問の声が聞かれるようになりました。「非加入世帯」分の行政事務委託料を返上し、町に広報誌の配布を求めることを議論している町内会もあると聞きます。

 先日、ある町内会が町の広報担当者に町内会「非加入世帯」への広報誌配布について相談したところ、「町内会非加入世帯への広報誌配布は必要ありません。その分の行政事務委託料を減額します。」と回答されたそうです。

以前に比べ、町内会の存在感が薄れていることは否めませんが、国にならって「自助」「共助」「公助」の順に町民の自立を求めている町が、「共助」の中核である町内会と町民の接点を否定したことは驚きです。町内会の必要性や重要性を町民に説くことなく、また町内会に協力を依頼することもなく「配布の必要がない」としたのです。度々、行政のスリム化のために「共助」を強調する町のこれまでの方針が変わったということなのでしょうか。勿論、町内会加入は義務でも強制されるものでもありませんが、町にとっても町民にとっても大切なものであることは今も昔も変わりません。

以前、「失われた地方移住交付金」の話で触れた「行政の不作為」と、この度の町内会非加入世帯への広報誌配布中止と併せて、「ひとりの不幸も見逃さない」という理念から遠ざかっているように感じます。インターネットが普及し、どこにいても何時でも情報が得られる時代といわれますが、広報誌からのみ情報を得ている町民は高齢者を中心に少なくありません。

全戸に設置されるはずの防災無線は契約から3年経っても進展がなく、「広報しべちゃ」の重要性はこれまでと何ら変わりません。広報誌の配布に関する方針転換から垣間見える町の変化に私たちはもっと敏感でなければならないと思います。極論ですが、全町民が町内会を脱退したら町はどうなるのでしょうか。たかが広報されど広報。広報難民問題をきっかけに本当の意味での「ひとりの不幸も見逃さない」について考えています。