トップページ > お知らせ一覧 > No.13 キタサンショウウオの憂い

No.13 キタサンショウウオの憂い

2023/03/03(金)

 憩の家に関して「ポンポン湯シリーズ」として話題を提供してきましたが、その後特段の進展はありません。正確には、大方の予想通り温泉の排出先が決まらないだけでなく、指定管理者の辞退などによって営業の目途がたたない状態のままということです。

12月の定例町議会で指定管理者が指定辞退を申し出た時点でさえ、「20236月開業予定」と強気の姿勢を崩さなかった標茶町ですが、舌の根も乾かない一か月後の1月末、開業時期を「20249月」に大幅な修正を公表しました。

残念ながら、大規模改修計画が始まってからずっとこうした対応が続いているので、いまさら誰も驚かなくなってしまいました。とは言え2年前に指定管理者を選定する際には、「再開の準備に向け、運営方針のすり合わせなどに相当の時間を要するので、施設の全貌が見えていなくても指定管理者を急いで選定しなければならない」として、時期尚早との異論を押し切って選定した経過があります。

前例に倣えば、来年9月の再開となれば今すぐに指定管理者を選定しなければならないことになりますが、そうした動きはありません。前回は特別に急ぐ事情でもあったのかと勘繰りたくなってしまいます。

ではなぜ営業再開が大規模改修の終了から二年後になるのか。指定管理者の辞退も含め、未だに決まらない温泉の排出先がネックになっていると考えるのが妥当でしょう。トイレの無い家を建ててしまったようなものです。

今後、国庫補助金(39千万円)の返還を求められるような事態になれば、いわゆる補助裏の資金として借り入れた「辺地債(8億円)」も一括返還しなければなりません。

分割で8割が地方交付税として戻ってくる大変有利な「借金」であると胸を張っていた町にとって、「補助金返還」「起債一括償還」は最悪のシナリオです。とすれば、公表された営業再開の時期というのは、国や北海道から示されたタイムリミットなのかも知れません。

 憩の家の「公設民営化」は、民間の発想によって町の観光を牽引する施設にするということで10数億円を投入していますから、町の直営では筋が通りません。

温泉排水の排出先も排出方法も具体的には決まらず、先行きは不透明です。従来の配水池を利用する案については、地権者との協議が整わず断念。シラルトロ湖への排出については、湖底から塩水が湧出している同湖の塩分濃度が上昇する懸念が示され断念。町が示す新案は、憩の家から釧路川まで直線的に約1㎞湿地を掘削して排水管を埋設するというものです。

タンチョウやキタサンショウウオへの影響、埋蔵文化財の調査などを慎重に確認しなければなりませんし、温泉熱による地温の上昇による植生への影響は避けられないと思います。

 町は1月末、太陽光発電事業に関する開発工事について、開発前に住民説明会の開催を義務付けるなどのガイドラインを策定しました。町民もキタサンショウウオもタンチョウも、このガイドラインは憩の家の温泉排水工事に準用されるべきと思っています。