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No.19 オソ18のこと(其の①)

2023/07/03(月)

 この日記を執筆中に、町内の共同牧野で放牧中の乳牛がヒグマに襲われました。現場に残された体毛のDNA鑑定結果から、これまでに厚岸町と標茶町で65頭の乳牛を死傷させた「オソ18」の仕業であると判明しました。

2018年に最初のヒグマによる乳牛被害が下御卒別で確認されました。被害に遭った乳牛が約600㎏の妊娠牛で、現場に残されたヒグマの足跡が18㎝あったことから、推定15400㎏を超える巨大なヒグマの仕業と考えられていました。あれから四年、「オソ18」と名付けられ各地で被害を重ねながら今日に至っています。

「オソ18」が巨大なヒグマであるということについては、当初から牛飼いの立場で異論を唱えていました。

理由は、乳牛の身体能力を考えると、もっと小柄で俊敏な個体でなければその後の育成牛中心の被害状況を説明できません。最初に600㎏の妊娠牛が被害に遭いましたが、曳きずることができなかった点も根拠のひとつです。

経験上、若いヒグマが牛を「襲ってみる」ことがあるということはわかっていました。後ろから抱え込まれた痕跡を残す放牧牛を目にしていましたから。「オソ18」は、その後の情報収集によって推定10300㎏の大きなヒグマであるとわかりました。ただ、脚のサイズが「16cm」であることもわかりましたが、いまのところ「オソ16」に改名されていません。

一般的に放牧牛は、放牧から12か月後の体調は「放牧ショック」により最悪です。特に馴致放牧されていない育成牛はその傾向が顕著で、足腰が弱い点と併せて被害に遭い易いと推察されます。「オソ18」の被害に遭った農場に偏りがあるのは、そうした影響もあるのではないでしょうか。

また、7月に入るとマダニ対策を採っていない放牧牛の多くは、小型ピロプラズマに感染しています。小型ピロプラズマに感染し、貧血を主症状とするタイレリア症を発症する育成牛が増えるのも6月下旬以降。こうした牛側の事情も被害と密接な関係があると思います。

ヒグマ側の要因としては、5月から7月が繁殖期なので雄の行動が活発になることが挙げられます。つまり、両者の要因が絶妙に重なるのが「今」なのです。標茶町が推進する「草地型酪農」の究極の形が放牧ですから、ヒグマの被害は必ず終息させなければなりません。

「オソ18」の捕獲と駆除が終着点ですが、容易ではありません。専門家の招へいや情報収集に注力するよう提案した結果、徐々にオソ18の実態が明らかになってきました。

一方で、気配や臭いを消すため、雨の夜に襲撃を繰り返していたであろう「オソ18」が、今回は雨の夜以外に牛を襲いました。強風や海霧の夜でも襲ってくる可能性が高くなったのかも知れません。

「オソ18」が自身の成長とともに動きが鈍重でタイレリア症で貧血になりやすい妊娠牛を狙い始めると、それはとても厄介です。今後、妊娠後期の牛を放牧しない。健康な牛のみを放牧することを提案します。        其の②に続く。