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No.21 焼尻めん羊牧場の再開① ~ 波高し

2023/08/02(水)

「焼尻めん羊牧場(羽幌町営)」が、60年の歴史に終止符を打ちます。直接の原因は、飼育員を確保できないためですが、背景には慢性的な赤字という厳しい現実があります。

 焼尻めん羊牧場は、焼尻島の漁業の不漁対策として1963年に始まりました。その後、全国的な離島ブームが到来し、焼尻島も脚光を浴びるようになりました。焼尻めん羊牧場も観光資源として存在感が大きくなっていきました。

また、離島故、外敵がいないことや家畜伝染病の清浄性を保ち易いとして、北海道のサフォーク種に関する純粋な血統維持を担ってきた牧場です。島で育つ羊は、プレ・サレと並び称される逸品。

2011年、洞爺湖で開催された「北海道洞爺湖サミット」晩餐会の食材に選ばれ、各国首脳がその味に舌鼓を打った「幻の羊」であり、フレンチの巨匠 三國清三氏が絶賛する選ばれしサフォーク種です。

 羊を生業とするには、「羊肉販売」、「羊毛販売」、「血液販売」など、羊を丸ごと使い切ったとして、1000頭飼養するのが損益分岐点といわれています。直売店や直営レストランなどを展開し、生産から販売までを一貫して行うとしても、やはり1000頭は必要です。

生体販売あるいは枝肉販売だけの場合は、3000頭以上を飼育しスケールメリットを出さなければ黒字化は難しいともいわれます。北海道の場合、放牧できる期間が約5か月しかなく、「牧羊」といいながら7か月近くを舎飼いしなければならないので経費率が高くなります。

そもそも、周囲12キロの焼尻島内にある焼尻めん羊牧場の敷地は、60ヘクタールほどの町有地のみ。無理しても最大700頭に対応するのが精一杯です。7月19日現在、母羊150頭、種雄が10頭。売約済の子羊が170頭。不漁対策で始まり、島の、ひいては羽幌町の観光をけん引してきた焼尻めん羊牧場ですが、この規模では赤字もやむを得ません。

しかし、財政的に余裕のない羽幌町にとっては、観光資源としての役割以上に看過できない赤字となってしまいました。廃止決定は、町として苦渋の決断であり、英断であったと思います。
 
それでも理想は、島に羊を残しつつ事業として成立させることなので、継続の道を探るべく焼尻島に渡りました。牧場の廃止は議会でも承認された事案であり、飼育員の退職が目前に迫っているため急を要します。一旦、羊を一括で引き取ることが可能で、来春以降、焼尻めん羊牧場を再開する意思のある牧場か企業を探さなければなりません。

厚岸町で太陽光発電と北海道和種馬(系種)の肥育を組み合わせて、自社スーパー(全国チェーン)に馬肉を供給している企業に打診すると、新規事業として羊肉生産の準備を進めていることがわかりました。

欧米で進む、牧畜によって耕作放棄地を再生しつつ、同時に再生可能エネルギーを作る「ソーラーグレージング」という、非常にスケールの大きな計画によって焼尻めん羊牧場再開への道筋をつけるところまでたどり着きました。

標茶町のめん羊事業も慢性的な赤字です。一度立ち止まって考えるべきでは…