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旧『みつのぶ の きまぐれコラム』-クリスマス肺炎に注意!。2022年11月11日文章

2022/11/01(火)
クリスマス肺炎に注意!
2022/11/1(火)

そもそも「クリスマス肺炎なんて聞いたことがない」という方、それもそのはず、これは私の造語です。どういうことか説明します。
 子牛の死亡原因のほとんどは「下痢」と「肺炎」です。生産者にとって、あるいは哺育専門業者にとっても決定的な解決策がない悩みの種です。

さて、今回の情報提供は、夏の暑さ、長引く残暑が去り、日毎寒さが厳しくなるこの時期に「クリスマス肺炎」への対策が必要だと言うことを説明しましょう。
 近年、標茶の夏もエアコンが必要なくらい気温が高く、暑さが苦手な牛にとって切ない日々が9月中旬まで続きます。

横臥せず、立位のまま体を風に当てる時間が長くなったり、気温が下がる夜間に集中的に採食したりと、牛の生活サイクルに狂いが生じます。その影響のひとつが「低体重子牛」です。

暑熱ストレスを抱える妊娠後期の母牛は、採食量が減り、栄養が不足気味となりやすく、このことが胎児の成長に影響します。9月下旬から10月末くらいに生まれる子牛の中に、骨格の割に体重の少ない(30kg台)子牛が目立つのは、こうした理由からだとされています。

そして、体重を量らない限り低体重子牛であることは分かり難いので、殆どの場合通常どおり哺乳されているのが実態です。寒冷対策のためにミルクの濃度を上げるのは、もう少し後でよいとお思いの生産者も多いでしょう。一般的に初乳による移行抗体の有効期間は三ヶ月と言われています。

しかし実際は、哺乳日数、栄養状態、離乳ストレスなどによって、もっと早く移行抗体が失われています。9月、10月に低体重で生まれた子牛の多くは、呼吸器系の疾病に対して抗体を持たない状態で寒冷期を迎えている可能性があります。こうした疾病に対して無防備な子牛が引き金となり、虚弱な子牛を巻き込んでクリスマス前後に肺炎が集団発生する状態を「クリスマス肺炎」と命名しました。

 では、どうしたらよいのでしょうか。具体的な対応をいくつか紹介します。

① 標茶町では、生後三ヶ月を目途に呼吸器系疾病の5種、あるいは6種混合ワクチンの接種が行われています。最悪なのは、離乳と寒冷ストレスが重なる場合なので、「生後三ヶ月にワクチン」の常識にとらわれない手当てが必要でしょう。

② 9月、10月生まれの子牛は、低体重による「虚弱」の可能性があるので、哺乳の内容を寒冷期並みの量、濃度にして、疾病に耐えられる体力をつけておくことをお奨めします。「動物性脂肪を含んだミルクを三割増しで」などを試してみてはどうでしょうか。

③ 肺炎に限らず、多頭飼育の場合、哺育牛は勿論、育成牛に関しても牛舎消毒は有効な疾病予防対策です。細霧や煙霧による消毒の場合、隅々まで消毒することができます。

④ 多頭哺育、多頭飼育を行っている牧場では、移行抗体(初乳から得られる)が失われた後、ワクチン接種によって「液性免疫」を獲得させる以外に、まだ、移行抗体が有効な時期にワクチンを接種することによって「細胞性免疫」を獲得させるというワクチンプログラムを採用している例もあります。

※ 移行抗体が有効な時期にワクチンを接種することに関しては、「ワクチンブレイク(ワクチンの無効化)」するので無駄という考えもあります。