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No.22 焼尻めん羊牧場の再開② ~ 拾う神あり

2023/09/14(木)

 914日現在、下川町の養鶏業者が事業を継承する方向となったことが報じられました。その約2ヶ月前、7月に焼尻めん羊牧場の存続に手を差し伸べようという企業と一緒に焼尻島を訪れました。

この企業こそ913日、白糠町に50億円規模の営農型太陽光発電所を設置することを発表した「町おこしエネルギー」です。

当然、焼尻めん羊牧場についても白糠町同様「※① ソーラー・グレイジング」によって、不採算の羊生産を太陽光発電や風力発電で補うことを提案しました。

 また、今回のようにめん羊生産未経験の企業が牧場を継承することも考慮し、次のとおりめん羊牧場が抱える問題点や飼養管理上の改善点を指摘しましたが、これについては標茶町にもあてはまることなので次のとおり公表します。


   スケール 羊は、国際的にみてスケールメリットと通年放牧による低コスト飼育によって利益を確保しています。焼尻めん羊牧場の場合、草地面積と畜舎のキャパという制約があり、飼養頭数は最大500頭位です。※② 必要な放牧地は50ha、採草地は20ha。放牧地の確保は問題ありませんが、越冬用乾草を自給する余裕がありません。肉素めん羊の生産の場合、500頭で利益を上げることは困難です。

   粗飼料 湿度が高い島の気候は、良質の乾草を調整するには不向きです。現に焼尻めん羊牧場の越冬用乾草は、良質とはいえず、カビの発生も看過できないレベルでした。カビは、心筋炎を引き起こし、突然死の原因になります。島外の酪農家から、低水分で柔らかい二番草ラップを主体に購入すれば、「飼料庫が不要」、「採草作業からの解放」、「採草関連経費削減」、「粗飼料の可消化率アップ」となり、育成効率の上昇と経費、労働時間の削減を達成できます。

   一貫経営 柔らかくて癖のない生ラムが人気ですが、こればかり売っても利益は出ません。12か月を超えて肥育される「フォゲット」や「マトン(親羊)」を食する文化を醸成しなければ、放牧することのメリットがありません。羊肉専門のレストランや精肉店、焼肉店など、生産から販売までを一貫して手掛る必要があります。

   季節外繁殖 厳寒期の出産を避ける生産者はいますが、通年出荷のために季節外繁殖を行っている生産者は皆無に近い状態です。酪農の現場で進化を続けるホルモン剤を用いて繁殖行動を促す「シダープログラム」技術を応用すべきです。端境期をなくすことで競争力が備わり、経営の安定化が図られます。

 

肉素の羊生産だけの場合、3,000頭程度の規模でなければ利益が出ません。1,000頭程度の場合は、肉、毛、皮革、血液を販売し、なおかつ精肉店やレストランを運営するなど、黒字部門の併設が必要です。

150頭以内ならワンオペ飼育と兼業が可能ですが、それ以上だと専業となります。

150頭以上飼育する場合、1,000頭くらいまでは赤字が増え続けることは、焼尻めん羊牧場と標茶町育成牧場の歴史が証明しています。


※① ソーラー・グレイジング

(放牧を利用した太陽光発電)

草刈りなどの作業は、設置場所の下などは特に多くの人手を要します。人間のメンテナンスによる介入よりも、より自然で、除草剤などの環境破壊もなく、かつ効果的な方法として羊の存在を利用することです。


※②  必要な放牧地は50ha・・・

    採草地は20ha・・・

※ 1 ha(ヘクタール)とは・・・

1ヘクタールは、一辺の長さが100mの正方形の面積、広さです。