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No.25 歪んだ羅針盤(障がい者を見捨てる町)

2023/12/26(火)

歪んだ羅針盤

「障がい者を見捨てる町」

 中札内高等養護学校の卒業を控え、担任から進路に関する希望を聞かれた少女は、「標茶町に戻りF木材で働きたい」と答えました。

 同級生の実家であり、幼い頃遊び場にしていた木工場の記憶が、「楽しい場所」から「自分を活かせる場所」となり、やがて「自分が生きて行くべき場所」になっていたのです。

 彼女の「F木材で働く」ことに対するゆるぎない決意を確信した担任は、彼女を伴ってF木材社長を訪ねました。二人は深々と頭を下げ、これまでの経過を説明し「どうしてもここで働きたい」、「何とかこの子を働かせて欲しい」とそれぞれが懇願したそうです。

 彼女を幼い頃から知る社長は、何とか希望を叶えてやりたいと思いましたが、力仕事や危険と隣り合わせ作業が多い製材工場で、果たして彼女の能力が活かせるのだろうかという不安が払しょくできずに逡巡したそうです。

やがて春になり、木の香りが立ちこめるF木材に彼女はいました。念願が叶ったのです。彼女が出来ること、苦手なことを慎重に見極めながら指導にあたられた社長と社員の皆さんの協力もあって、10年間立派に仕事に励んだ彼女でしたが、標茶町を離れることになりました。

その理由をご両親は「この子を温かく見守っていただいたことは、大変ありがたく感謝してもしきれません。しかし、私たちが自分の老後を心配する年齢となり、他の町へ転出することにしました。

娘は毎日工場に行くことや、新しい仕事を覚えるのを楽しみにしていました。それでも、私たちは娘一人残して行くことはできません。一人で暮らすのは、無理なのです。職場のように周囲に支援していただく環境がありませんから。」と語りました。

当時と比べ標茶町の障がい者福祉は、特に知的障がい者を取り巻く環境は随分変わりました。しかし、相変わらず障がい者の自立には多くの課題が残されています。そのひとつが「グループホーム」です。

障がい者自身は勿論、保護者も高齢化していきます。それぞれが介護や自立が必要になるときが必ず訪れます。障がい者はいずれ保護者から離れて生活しなければならないのです。標茶町には、それを支える環境が今もありません。

12月の議会で町は、障がい者の自立に欠かせないグループホームを町が建設する考えはないかと問われ「建設費用、必要な人員配置を考えると困難」「他の自治体では民間が行っている事業」と突き放しました。

これまでも、これからもできることはやるという姿勢に変わりはないが、現状において関係者からの具体的な働きかけがないとも言いました。高齢者に関してもそうですが、福祉関連施設をフル装備するのは身の丈に合わないというのが町の考え方です。

しかし、本来標茶町で暮らすはずの障がい者を町外の福祉施設等で受け入れてもらうために年間5千万円以上を支出していることは、意外と知られていません。10年で5億円20年で10億円になるわけで、これだけあれば立派な施設ができると思います。

 本当に身の丈に合っていないのは、赤字必至の施設に16億円以上を投じることでは?