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No.5 「ぽんぽんゆ」のこと その②

2022/12/02(金)


2010年、山形県銀山温泉の老舗旅館が、経営難により民事再生法の適用を申請しました。負債総額は約5億円ともいわれました。銀山温泉は400年の歴史を持つ庶民に愛されている温泉です。

温泉街を形成するそれぞれの旅館は、黒い柱と漆喰の白壁から成り、大正ロマン溢れる街並みと形容され親しまれています。倒産した老舗旅館もまた、ひなびた温泉街の景観に溶け込む外観、郷土色溢れる料理、そして温もりが伝わる接客が多くの客を集め、繁盛していました。

ではなぜ、この旅館は倒産したのでしょうか。その理由のひとつが「有名建築家による改装」ではないかといわれています。名物女将の人気もあって飛ぶ鳥を落とす勢いのこの旅館は、四億円を投じて「和モダンなホテル」に生まれ変わりました。2006年のことです。

生まれ変わった旅館は、宿泊料金が従来の3倍を超える一泊35,000円から50,000円になりました。設計コンセプトにより収容客数が13になったので当然といえば当然のことです。しかし、このことが客層までも変えてしまったことは容易に想像できます。温泉街の中でのある種の違和感は、建物の外観だけでなく食事の内容や客層にも及び、結果として回送からわずか四年で多額の負債を抱え倒産するに至ったのです。

改装計画が持ち上がった当初から、「銀山温泉を愛する庶民の感覚と乖離した建物」が温もりを基調とした温泉街の調和を崩したといわれ続けた末の倒産……

 この温泉旅館は「旅館 藤屋(現在は、ホテル藤屋)」。改装を手掛けたのは、「ぽんぽんゆ」を設計した隈研吾氏です。ちなみに「ぽんぽんゆ」の宿泊料金は、ひとり一泊24,000円、30,000円、36,000円、50,000円と4通り。夕食は、5,000円から7,000円で朝食が2,000円。日帰り入浴料金は、1,500円(町民の入浴料金は未定)。レストランメニューは未定。

 銀山温泉の「ホテル藤屋」が、庶民感覚を残した風情やサービスを維持していたら倒産は回避できたのではないかといわれていますが、それは誰にも分かりません。そして「ぽんぽんゆ」が銀山温泉藤屋のような悲劇的な結末を迎えないと、誰か断言できますか?